二世帯住宅と税金

注文住宅を新築するにあたって、親の世帯と同じ建物で暮らすという、いわゆる二世帯住宅として設計をすることもあるはずです。最近の我が国では高度経済成長のような爆発的な経済成長がなくなり、若者世代としても所得が相対的に減少気味であることから、親世帯と建物を共有することによって、新築にかかる金銭的な負担を軽減するというのは、メリットが大きいといえるでしょう。こうした二世帯住宅については、税制面でも他の住宅と比較してめぐまれたしくみが採り入れられていることも、注目されるところです。
たとえば、両親などの近親者が亡くなった場合には、血縁的に一定の範囲の人々がその財産を取得する相続が発生しますが、この相続で得られた財産には相続税が課税されるものです。土地や住宅のような不動産の場合、その評価額に応じて相続税を支払わなければなりませんが、金銭で一括して納付するのが国税の原則となっているため、相続人にとってみればたいへんな負担になるといえます。最近では相続税の基礎控除額が法律の改正によって引き下げられてしまい、これまでは相続税を支払わなくてもすんだ人々までが、相続税の課税という負担をこうむるようになってきています。
しかし、そうした税制改正のなかでも、負担軽減策がいくつか登場しており、二世帯住宅ではその恩恵を受けやすくなっています。たとえば、相続税における小規模宅地等の特例は、一定の面積までマイホームの敷地となっている土地などの評価額を減額するという特例ですが、二世帯住宅の場合には、親世帯と子世帯が別々ということではなく、敷地となっている土地がまるごと特例の対象として認められることから、土地に対する相続税の評価額が、最大で8割まで減額できることになり、メリットはきわめて大きなものがあります。
また、相続税における二世帯住宅の考え方についても、法律の改正により、従来よりも要件が緩和されています。これまでの相続税制では、玄関が共用であるか、または玄関が別々になっていたとしても、建物の内部で世帯が相互に行き来ができる構造でなければならないものとされていました。しかし、現在ではこうした二世帯住宅の構造に関する要件は除外されており、いわゆる分離タイプの構造となっている二世帯住宅であっても、税制上の特例を受けられるようになりました。このことによって、注文住宅として二世帯住宅を新築することが相続税対策となりうる余地が、ますます広がることになりました。